川原正方

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2021年リリース曲ベスト24寸評

Drive My Car - 石橋英子

映画『ドライブ・マイ・カー』のサントラ。石橋英子氏が普段リリースする即興演奏等は、聴くけど、即興演奏自体の魅力をいまいち理解できていないから、それほど入れ込んで聴かない。けど、こうしてサントラに作られる石橋英子の作品/仕事はとても魅力的だと思い、熱心に聴く。映画は観ていないけど、観ようかなという気にさせられる。『ドライブ・マイ・カー』のサントラは、今年リリースされたアルバムの中で、よく聴いた気がする。かなりお気に入りの一枚。

Bambi - Clairo

クレイロというシンガーソングライター。一時期、女性シンガーソングライターの曲を集めてプレイリストを作っており、その過程で知った。この曲も、Amoebaという曲も好きで、声も、音色も良いと思う。この曲はアルバムの一曲目で、「幕が開く」感じと、テンションを抑制した感じが好み。

Camera Phone - @

上記と同じ経緯で知った。こちらもテンションの抑制加減が良くて、サイケな音色もよい。で、誰なんだろうと調べたがStone Filipczak and Victoria Roseとのことで、誰かよく判らない。

Global Worming Kills Us All - Buffalo Daughter

大御所。普通に良かったから、普通に良く聴いた。普通に良い、というのは凄いと思う。たぶん、誰が聴いても「普通に良い」からそれ以上の評価を得られるんだと思う。だから大御所だと思う。

I Won't Hurry Love - Fryars

一時期のSufjan Stevensをほうふつとさせるメロディと、華やかなストリングス。なぜかショーン・オヘイガンがRTしており、多分アレンジかなんかで関わってるんだと思う。マジで普通にいい曲で、アルバムを一聴することをオススメする。

Plum - André Ceccarelli, Sylvain Luc, Hadrien Feraud, Alex Ligertwood

なんか普通にかっこいいロック。詳細は知らない。ギターがいい。

Me Myself and Doller Hell - Mild High Club

久しぶりのリリースで、シングルを小出しにしてたあたりから期待値が高まるばかりだったが、アルバムが出てみると、結局一番気に入ったのはシングルの曲だった。なかでもこの曲とIt's Over Againが良かった。聴きやすいこちらを選曲。しかし、Mild High Clubは最初の二枚で完成してしまったのかもしれないな、と思わないでもない。つまり、かれらが作ったのはアルバムだけでなく、こういったジャンル/価値観/センスだった。まったく違う新しいジャンルでまったく違う音楽を作っても、とても良いものを作ってしまうんだろうと思う。

Little Season I - Bruno Pernadas

待ちに待った新譜。Ya Ya Breatheの衝撃を超えられるかというと、それは難しいのだけど(こっちの思い入れ込みのやつだから)、でもよかった。及第点じゃないでしょうか、という何様コメントを残しておく。

Matéria de Improviso F - André Mehmari & Antonio Loureiro

この曲を聴いてびっくりした。まずこの二人がこういうアルバム作るんだ、というのがびっくりだし、またこの曲がすごい良い。個人的に、アンドレ・メマーリはゆったりなミナス系の曲をピアノでつくりまっせのひとだし、アントニオ・レウロイロはギターでミナス系の曲つくりまっせのひとだったから、インプロをオーバーダブして曲に仕上げますよみたいな、即興演奏系のひとのやつやんというのをするとは思わなかった。が、超よかった。このアルバムのためにメマーリ氏のこと調べて、マジの音楽やくざだと思った(楽器がたくさんできて楽理ガチ勢なんだな思ったという意味)。

Waves Know Shores - The Venom Spring

ジェイムス・ブレイクカバーらしいです。知らなかった。静謐なピアノに耳を傾けたいときに、アルバムを通して聴くとよいと思う。

Komani - Keenan Meyer ft. Tshepo Tsotetsi

Keenan Meyerは、今年知れて良かったアーティストのひとり。本当にKeenan Meyerの作曲がすごい。それだけで万人が一聴するに値すると思う。どの曲もよかったが、この曲以外にはThe MountainとMoonchildが好き。CDが出ていないという謎の状態。つまり、ストリーミングしかされていない。CDとLP出してくれたらどっちも買うから、マジで。

I SING HIGH - Sam Gendel, Sam Wilkes

Sam Wilkesがもともと好きで、久々のアルバムなので嬉しい。世間的にはGendelに注目しがちだが、Wilkesの曲の雰囲気も相当だと思う。まあ、リリースの数なのかなあ(と、勝手にWilkesの肩を持つ)。

Fable of the Urban Fox - Arab Strap

Arab Strapは今年リリースのアルバムで初めて知った。90年代から活動して、一回休止を挟んで、今回ひさびさのリリースらしい。良かったです。

Fast Friends - Michel Seyer

はい、去年渇望していたMichel Seyerの新譜です。素敵な歌声、うっとりするメロディ。文句なしですな。日本でライブやってくれたらもっといい。

Back to Oz - Sufjan Stevens & Angelo De Augustine

Sufjan Stevensがここ最近になってかなりいいアルバムを出している。その中でもアップテンポ目の曲。だが、他の曲、つまり静かで、おっとりとしているが、魂を一音一音込めて歌っているような曲も好き。

THE GHOST RANKING DREAD! - JPEGMAFIA ft. Tkay Maidza

JPEGMAFIAの新譜は今年も良かった。ぶっ壊れていて、その上整おうとしている。ビートを壊し、メロディをつぶそうとするのに、踊り、歌おうとする。以前リリースした『All My Heroes~』は「チルと暴力性の同居」と表現されていたが、個人的にはちがうと思う。それは結果としてそう聴こえるかもしれないが、なぜそう聴こえるかというと、『All My Heroes~』はJPEGMAFIAの走馬灯、目を閉じる一瞬に沸き上がるあらゆる感情を引き延ばしたもの、整理しない感情の総まとめだったからだ(と解釈した)。では今回は? よく判らない。でもいいアルバムだと思うからよく聴いた。数か月の間に起ったことを、いま思い出して書いているような日記とでも言おうか。そこには未来がなく、私小説的で、完結した過去だけがある。

24 - Kanye West

やっぱカニエってすげーわという気持になる。いろんな活動をしていて、お騒がせものだったりするかもだが、やっぱ本分はここだなと再確認させられる。

Last Minutes of the Memory  - death’s dynamic shroud

年末に知った。こういうケミカルで毒々しい曲が好き。

Zone U Can't See - Iglooghost

Iglooghostのアルバムで、このアルバムが二番目にすごいかもしれない(永遠の一番はMilk Empire)。ちょっと何が起こってるか判らないほどのすごさ。判らないのはバカだからなんだけど。このアルバムに入っているUI Birth (feat. BABii)もいい。どうでもいい発見だが2019年リリースの『XYZ』に入っているTeeg Chizzelから安田成美の「風の谷のナウシカ」につなげると思う。

参考文献

Superman That - Injury Reserve

ブチギレてるので好き。こういうむちゃくちゃな曲を「むちゃくちゃだ~」と楽しませながら最後まで聞かせるのは凄いと思う。

All The Words We Don't Say - Hiatus Kaiyote

待ちに待った新譜。Get Sunをはじめいい曲ぞろいだが、個人的にはこの曲がベスト。

New Wave / Dead Age - Matty

どえらい数の曲が収録されているが、この曲がデトロイトテクノっぽくて好き。

Higher Self - Kìzis

今年知れてよかったと思ったアーティスト、二人目。Kìzis、彼女の音楽は時々驚くぐらいよい。全部いいわけじゃないのは当たり前。とんでもなく良い曲を作れるのは本当にすごいのだ。その中でもWe Are StrongとかRunとか、テクノっぽい曲から彼女の故郷の音楽らしい歌唱曲から、たくさんあって、Kìzisのたましいをぶつけられているな、と聴くたびに思う。表現と呼んでもいい、しかしあまりにも生々しく、形の残ったものをぶつけられるから、たましいだ、と感じる。

Things to Ponder While Falling - Sweet Trip

Sweet Tripが以前リリースした曲をリマスターし、しかも2021年録音の曲を収録しなおして再リリースした。増補新版だ。しかもその曲がえらくかっこいい。

かっこいい、それだけでかまいませんか。それだけでお勧めするには十分すぎる曲なので。