川原正方

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Fashion Showいくつか

趣味のひとつに「ハイブランドのFashion Showの動画を見ながら酒を飲む」というものがある。

久しくやっていなかったのだけど、友人からLuis Vuitton2022Mens FWを勧められて観たら、すごくよかった。

で、気が向いたので最近のものをいくつかチェックして、備忘録としてここに感想を書いておく。

 

これは上述のLuis Vuittonで、最近は冒頭にコンセプトムービーみたいなものをつけているらしい、というのをこれで知った。

自分はハイブランドをまったく身につけないしファストファッションで済ますので、服を見て着てみたいとかはほとんど思わない。が、Fashion Showを「服を見せる舞台芸術」だと思っているので、ここ最近のイッセイミヤケとかの「モデル以外にダンサーを歩かせる」というのが結構好き。

こういうShowでの服は、たいてい動いている人が着る。モデルさんは歩くし、寝た人がLuis Vuittonを着て搬送されてまた去っていくことはない(と思う)。じゃあ、歩くとと、跳ねたり走ったり踊ったりすることは、どれだけ差があるだろうか? と思ったときに「ま、走って服かっこよく見えりゃそれでいいじゃん」って気にもなる。んでしょうか? 見てるだけならそういうのもありじゃんって思える。

で、上記の映像の、跳ねて階段に戻ってくる冒頭のシーンとか、とつぜん倒れたりするところとか、ストリート×コンテンポラリーダンスって感じでかっこいい。調べたらやっぱりそうでした。

しかも音楽のアレンジがアルチュール・ヴェロカイだよ。たまんないね。

くわえて(っていうか本分だけど)服もかっこいい。

ちなみにLuis Vuittonはこの間のShowも良くて、この時は客を入れてないから映像なんだけど、いい感じです。

 

Thom Browneの秋冬。モデルさんが仮面をつけている。舞台の衣装っぽくていい。

仮面は顔を隠す。そして身体を際立たせる。モデルさんたちは食事制限やトレーニングをして、身体を作る。そして服をまとう。modelという語の通り、モデルさんたちは服をまとう「型」だ。自分はそのモデルさんが服を着て歩くだけなのに、なんでFashion Showを面白く観れるんだろうとずっと不思議だった。思い当たった理由が「身体性を感じるから」だった。

ダンスでも演劇でも、人間がいる以上身体性は失くせない。そして、それを作品の魅力にするということは切って離せないものだと思う(たとえば、錬肉工房の『盲者たち』では全く動かない、喋らない男がいるのに、その男の存在感はまったく否定できず、むしろ「動かないからこそ存在感があり、その存在は否定できなかった」と思う。何故かというと、ひとえに役者の身体が優れているからだとしか思えない)。

歩くだけなのに見続けられる身体を持つモデルさんたちはすごい、と思う。そんなことを言うと服のデザイナーは面白くないかもしれない。もちろん、服のデザインもみているのだけど。

今回のThom Browneはわりあい具象的なセットで、従来通りのファンタジー感のある演出だ。その中で立つには、やはり相応の服が必要であろうし、相応な身体が必要だと思う。

 

 

そう言う意味でいうとDolce & Gabbanaは「なんじゃこりゃ?」と思った。ぎらついたおっさんのための服をセールスしたい、という意図しかくみ取れず、別に面白くもなかった。

まあ、Fashion Showはセールスのためにやることなんだから、当たり前なんだけど。

似たような意味でこれとか、観ててこっぱずかしい。コスプレ大会じゃん、っていうのもあるけど、じゃあ普通にVirtual Insanity流して服見せればいーじゃん。あといまジャミロクワイって正気? 自分も好きだけど、いま服見せたり宣伝用にジャミロクワイ使うってテレビで車のCMにイエス使うのと変わんないセンスだよね。

 

 

Issei Miyakeは前に友人が「あんまり好きじゃない」って言ってたのを見返してけど、悪くないんじゃないかな。でも0秒~1分50秒までは良いんだけど、それからいつもの(って言ったら悪いけど)テキスタイルを見せつけるようにモデルさんたちが歩いてきて(3分10秒あたりまで)、アーティストが歌い始める。この真ん中の歩いてくるシーンが、Showを最後まで見ても異物混入感があり、なら8分25秒あたりまで我慢しとけばよかったじゃん、と思う。そこに挿入するなら違和感ないよ。

これは邪推だけど、Playgraundsとか見て、いいなぁ、おもしろいなぁ、演出のひとすごい考えてるんだなぁとか思ってたので、なんか違和感がある。もしかして途中で物言いがついたんじゃないか? 東京オリンピックみたいにさ。

あとさ、これ何なの? サーカスじゃないんだから。すごいShowだなぁって思うけど、別に服かっこいいとか思えないよ。だって服見せる以外のことしてるんだもん。

 

上記を見てわかる通り、テレビ見ながらぶつぶつ独り言いってるおっさんとほとんど同じ目線でしか見れていない。当たり前だ、べつにファッションに興味ないんだから。でもFashion Showは好き。そうなったきっかけは二つある。

ひとつはMirte Maasというモデルさんを知ったから。

「About A Girl...」というブログがあって(ここにたどり着いたきっかけは全然覚えてない)、そこで見た写真に驚いた。白いシャツとジーンズだけでものすごく綺麗だったから。該当の記事をここに載せたかったけど見つからなかったので、Mirte Maas氏のInstagramにリンクしておく。本当にきれいなひとだなぁ。ちなみにこれはモデル履歴

きっかけのもう一つは、Chanelの2015/16 Métiers d’art Showに出会ったから。

 

舞台のセットと音楽でもう百点なんだけど、舞台のセットと導線の複雑さが「モデルさんが服を着て歩く」という当たり前の部分を支えている、つまり必然性をつくっているのだ。抽象的な場所を歩いて、カメラに撮ってもらって、帰る。そのやりとりを「日常性」のなかに入れてしまう。そして成り立たせてしまう。これは舞台芸術じゃないか。

そのなかでもリアリティのある服を着ているShowだったと思う。変な思い込みもあったけど、初めて見たShowがこれで本当に良かったと思う。

 

最後に、久々に見たら良かったChanelのShowを乗せておく。演出が本当に上手だ。街の人がふつうにみてるのもいい。